数値で確認する、呼吸用保護具(マスク)のフィットテスト
呼吸用保護具(マスク)は、正しく選定しただけでは十分な保護性能を発揮できません。顔とマスクの間にわずかな隙間があると、汚染された空気がフィルターを通らずにマスク内部へ入り込む可能性があります。
ETC OKINAWAでは、PortaCount®を使用した定量的フィットテストを実施し、作業者が実際に使用する呼吸用保護具の密着性を数値で確認しています。
フィットテストの実施義務
米国OSHAの呼吸保護基準29 CFR 1910.134では、作業上、呼吸用保護具(マスク)の着用が必要な場合、または雇用主が着用を義務付ける場合、事業者は作業場所に応じた書面の「呼吸保護プログラム(Respiratory Protection Program)」を策定・実施しなければなりません。
このプログラムには、次のような項目などが含まれます。
- 作業環境と有害物質に応じた呼吸用保護具の選定
- 呼吸用保護具を安全に使用できるかを確認する医学的評価
- フィットテスト
密着形の呼吸用保護具を使用する作業者は、実際に職場で使用するものと同じメーカー、モデル、スタイル、サイズのマスクで、初回使用前および少なくとも年1回、フィットテストを受ける必要があります。
また、マスクのメーカー・モデル・形状・サイズを変更した場合や、体重の大きな変化、歯科的変化、顔の傷、手術など、密着性に影響する身体的変化があった場合にも追加のフィットテストが必要です。OSHA 29 CFR 1910.134
米軍施設内の工事でも、適用される契約仕様、USACE等の安全要求事項、工事内容によって、呼吸保護プログラムやフィットテスト記録の提出が求められています。
PortaCount®による定量的フィットテスト
ETC OKINAWAでは、PortaCount®を使用した定量的フィットテスト(Quantitative Fit Test:QNFT)を提供しています。
PortaCount®は、マスク外部と内部の微粒子濃度を測定・比較し、その比率を「フィットファクター」として数値化します。においや味に対する受検者の主観的な反応で判定する定性フィットテストとは異なり、密着状態を客観的な数値として確認できることが特徴です。
OSHAの定量的フィットテストにおける合格基準は、次のとおりです。
| 呼吸用保護具 | 合格に必要なフィットファクター |
|---|---|
| 密着形半面形マスク | 100以上 |
| 密着形全面形マスク | 500以上 |
ここで注意したいのが、Assigned Protection Factor(APF)とフィットファクターは別の概念であることです。
- APF:適切な呼吸保護プログラムの下で使用した場合に期待される保護性能
- フィットファクター:フィットテスト時に測定した、マスク外部と内部の濃度比
OSHAでは、密着形半面形空気清浄式呼吸用保護具のAPFは通常10、密着形全面形は、必要な定量的フィットテストを含む条件を満たした場合にAPF 50とされています。フィットテストはAPFそのものを測定する試験ではなく、選択したマスクがその作業者の顔に適合しているかを確認する試験です。OSHA Appendix A:Fit Testing Procedures
数値だから確認できる、わずかな漏れ
ETC OKINAWAでは、2025年7月にサービスを開始して以来、作業員、現場監督者、第三者機関のコンサルタントなど、延べ250を超えるマスクに対してフィットテストを実施してきました。
実施を重ねる中で感じるのは、外見上は正しく装着できているように見えても、測定すると十分な密着性が得られていないケースが少なくないことです。
例えば、次のような状態が結果に影響します。
- 前髪やもみあげが密着面に挟まっている
- ストラップの締め方に偏りがある
- マスクの位置が高すぎる、または低すぎる
- サイズや形状が顔に合っていない
- 吸気弁・排気弁や面体が汚れている
- 部品が劣化・変形している
マスクの使用経験が長いベテラン作業者でも、不合格になることがあります。これは経験を否定するものではなく、長年の装着方法に気づきにくい癖があったり、使用しているモデルが現在の顔の形に合わなかったりするためです。
不合格になった場合は、装着方法を見直し、必要に応じて別のサイズやモデルを検討します。合格することだけを目的にストラップを過度に締めるのではなく、実際の作業でも継続して使用できる、無理のない密着状態を見つけることが大切です。
テスト後、作業者の方がマスクの密着性をより意識して現場へ戻られる姿を見ると、このサービスが曝露防止の一助になっていることを実感します。
アスベスト工事以外にも広がるフィットテスト
フィットテストは、米軍基地内のアスベスト工事だけを対象とするものではありません。溶接作業、医療機関、研究施設など、密着形の呼吸用保護具を使用するさまざまな現場で必要とされています。
日本国内では、屋内で金属アーク溶接等作業を継続して行い、面体形の呼吸用保護具を使用する労働者について、事業者は1年以内ごとに1回、フィットテストを実施しなければなりません。試験は、原則としてJIS T 8150に定める方法またはこれと同等の方法により実施し、記録を3年間保存します。厚生労働省「溶接ヒュームに係る規制」
医療機関では、結核患者への対応や、気管支鏡検査、喀痰誘発などのエアロゾルが発生する処置においてN95マスク等が使用されます。厚生労働省の感染対策資料でも、N95マスクの導入時や定期的なフィットテストと、装着するたびに行うユーザーシールチェックの重要性が示されています。厚生労働省「院内感染対策講習会資料」
対象となる主な分野
- 米軍基地内のアスベスト・鉛・解体作業
- 屋内で継続して行われる金属アーク溶接等作業
- 結核患者への対応を行う医療従事者
- 気管支鏡検査、喀痰誘発などを行う医療機関
- 研究・検査施設や粉じん作業
- 密着形の防じん・防毒マスクを業務上使用する事業所
PortaCount 8048は、OSHAの短縮定量プロトコルに対応しており、従来約7分を要した測定部分を約2分30秒に短縮できます。なお、日本国内の法令に基づくフィットテストについては、JIS T 8150その他の適用基準に応じた試験手順を使用します。
フィットテストを受ける前の注意事項

1.ひげ・毛髪について
OSHAでは、無精ひげ、あごひげ、口ひげ、もみあげ、前髪などの毛髪が、面体のシール面と皮膚の間に入る状態では、フィットテストを実施してはならないと定めています。また、密着面に干渉するひげ等がある状態で、密着形呼吸用保護具を作業に使用することも認められていません。長髪や口ひげが一律に禁止されるわけではありませんが、シール面やバルブ機能に干渉しないように整える必要があります。該当する状態が確認された場合、ETC OKINAWAではテストを延期またはお断りすることがあります。
2.実際に使用するマスクをご準備ください
フィットテストは、実際の作業で使用するものと同じメーカー、モデル、スタイル、サイズのマスクで行う必要があります。合格結果は、テストした特定の組合せに対するものです。別のメーカー、モデル、形状またはサイズのマスクへ変更した場合、原則として改めてフィットテストが必要です。
3.マスクの洗浄・点検
持参するマスクは、事前に適切な洗浄・点検を行ってください。
面体内部が著しく汚れていたり、部品が劣化・破損している状態では、正確で衛生的なテストができないため、実施を延期またはお断りする場合があります。清潔なマスクの準備は、受検者本人だけでなく、他の受検者と測定機器を保護するためにも必要です。
4.医学的評価について
OSHAの要求に基づいて呼吸用保護具を使用する場合、事業者は、作業者がフィットテストや実際の着用を行う前に、医師またはその他の資格を有する医療専門職による医学的評価を受けられるようにする必要があります。
ETC OKINAWAのフィットテストは、医学的に呼吸用保護具を使用できるかを判定する健康診断ではありません。医学的評価の手配と使用許可の確認は、原則として受検者の所属事業者が行います。
フィットテスト結果の位置づけ
フィットテストは、実施時点において、特定のマスクが受検者の顔に適合しているかを確認するものです。選定したフィルターやカートリッジが対象物質に適していることや有害物質への曝露や健康障害が完全に防止されること、呼吸用保護具の選定、保守、交換時期等が適切であることを保証するものではございません。作業者は、マスクを装着するたびにuser seal checkを行い、作業中に漏れ、異臭、ガス・蒸気の破過、呼吸抵抗の変化などを感じた場合には、直ちに安全区域へ退出して点検・交換しなければなりません。
ETC OKINAWAと事業者様の役割
ETC OKINAWAは、合意した試験範囲において、適切に管理された測定機器と所定の手順を使用し、定量的フィットテストの実施および結果の記録を行います。
一方、呼吸保護プログラム全体の策定・実施については、受検者の所属事業者が責任を負います。これには次の事項が含まれます。
- 作業環境と曝露濃度の評価
- 適切な呼吸用保護具・フィルター等の選定
- 医学的評価
- 作業者への教育・訓練
- 洗浄、点検、保管、部品交換
- カートリッジ等の交換スケジュール
- 現場での適正使用の監督
- フィットテスト記録の管理
- 呼吸保護プログラムの定期評価
お申し込み時には、テスト条件、受検者・事業者・ETC OKINAWAそれぞれの役割、個人情報および測定結果の取扱いを記載した確認書をご案内します。
お申し込み・お問い合わせ
ETC OKINAWAでは、個人から複数名の事業所・プロジェクトまで、PortaCount®による定量的フィットテストのご相談を承っています。
実施人数、使用するマスクのメーカー・モデル・サイズ、希望日程、実施場所などをお知らせください。現場条件やご希望内容を確認したうえで、実施方法をご案内します。
